記憶がとにかく無くなる。記憶をとどめておくことが不可能。忘れるではなくて、記憶に残らない。今ある点でしか生きられない母。周りの家族は過去から現在、未来との線で生きている。そんなギャップは実に大きい。
今を生きる
母の残されている記憶は数少ない
小学校の頃の記憶や、自身の姉のこと、孫を一時面倒見たことくらいだろうか
自分の年齢も分かってない。
だから79歳と聞いて驚く。自分が写ってる写真を見て驚く。
でもすぐに忘れる。
どんどん記憶がなくなっていく
認知症になった母は今しか生きられない。
過去の記憶もこれから起こることも一切思考に無い。
今現在の目の前にあることの中で生きている。
だから同じことを何度も訊いてくる
質問した会話はすぐ忘れちゃうから
何回同じこと質問しても気づいてない
こっちの返事が全く違っても気づかない
そして過去の記憶や時間感覚、人の関係性も何も無いから
勝手な解釈、独自の思い込みの世界に入って勝手に怒ったりする
父が仕事で家にいないと、ご飯を一人で食べに行ったと思って怒る(午前10時なのに)
今が何人家族で暮らしているか分からないから、私一人で家にいると
みんなが私(母)を避けて出ていったとか言って混乱している
これを修正することはかなり難しい
のらりくらりと返事をしてかわしていく
認知症になった母は独自の世界の中で生きている
そんな感覚に陥る
今を生きる母と現在を生きる家族
今しかない世界で生きている母
そして過去から未来へと繋がる現在を生きる私たち家族
記憶があるから、母の幾度とない同じ質問に疲れてしまう
特にずっと一緒に暮らしている父は分かっていてもイライラしてしまう
「どうして分かってくれないんだろ」って言うけど
認知症だから仕方のないこと
父は母の認知症の世界にひきづり込まれて自分自身のメンタルを追い込んでしまう
だって父には記憶が残るから、今現在しか生きていない母とのズレが生じてしまう
何も記憶に残らない母と記憶に残る父
何をしても記憶に残らない母を幸せだと思う反面
記憶に残らない母はやっぱり不憫だ。
そしてそれに巻き込まれる父は辛い
母の認知症を受け入れているようで受け入れられないのは
娘の立場と違って夫婦の歴史があるからなのかな
何者でもない母の存在
認知症の母には母にしか分からない世界があって
母はその中で生きている
夫である父がいてムギって名前の猫を飼ってる
季節も月日も曜日も時間もよく分からない空間で生きてる
デイサービスに通ってるけど、仕事だと思って行ってる
いつ、何時に来るか分からないけど
とにかく朝来ることだけ分かる
スーパーが近くにあって便利
母の世界はこれだけしか情報がない
この中で母は必死に生きてる
介護をしている私たちは
そんな母の世界を理解しないと
イライラや葛藤、不安とか負の感情が湧いてくる
母の世界を理解しないと
母は今という点の中でしか生きていないこと
私たちは過去から現在未来の線の中で生きている
そうやって理解してくると
母の世界に生きてる母を俯瞰的に見れるようになる
冷静でいられるようになる
母の世界に巻き込まれないように
自分を常に保つことが大事だったりする